指宿鰹節はその大半が最終的に日本料理店や蕎麦店などで購入され、料理のだしとして使用されます。
しかし、だしと一口にいっても、使われるかつお節の種類は微妙に異なります。その理由は、それぞれの地域における食文化が異なるからです。基本的に関東ではカビ付けをしたものが、関西以西ではカビ付けをしないものが好まれる傾向にあります。
いずれにせよ、日本料理の味の基本をなすものは、なんといってもだしです。だしが料理のすべてを決定づけるといっても過言ではありません。日本料理の場合、だしの材料の中核をなすのはかつお節です。つまり、だしの良し悪しはかつお節にかかっているといってもいいわけです。そこで、特に高級料理店ではだしに最大限の神経が払われ、その結果、選りすぐりの最良の本枯れ節が使われます。これなくして、あの澄んだ、それでいて美味な味はつくりだせないのです。
かつては、このような店を訪れる人の客層はごく限られていたのですが、今やその層は広がりをみせています。それは、グルメブームを背景に、一般消費者のだしに対する本物志向が高まったことによります。それは蕎麦店においても同じで、極上のおいしさを提供する店には行列ができるほどです。このような店は、だしに最良のかつお節を使っており、そのこだわりがおいしいものを追求する消費者の満足度を刺激したのです。さらに、一般の消費者の中にも、味にこだわるあまり、家庭でそのおいしさをつくりだそうと、上質のかつお節を求め、問屋にまで足を運ぶ人がいます。しかもその数は目立って増えています。
このように、今は、グルメブームがより進んで、本物にこだわる時代へと移行しつつあります。それだけにすぐれた上質のかつお節が求められています。
指宿産のかつお節のうち、本枯れ節は主に関東へ、裸節は主に関西に、問屋を通して出荷されます。大都市圏の問屋の中には、節だけでなく、それを自分の店で削って販売するところも多くみられ、前夜に得意先の料理店などから注文を受けると、その日使用する分を要望ごとに削って混合し、毎日配達します。そのような専門店のない地方の場合だと、多くの料理店では、削りたてをチッソガス注入してパック詰めにしたものを先の問屋から取り寄せるケースが多いようです。
いずれにしても、現代人の高級志向のニーズに応えられるかつお節として、指宿産の節は全国で使用されています。